ワイヤレス固定電話について、通常の固定電話と何が違うか分からないという方はいませんか?
実は、ワイヤレス固定電話は、今後の電話業界の行く末を左右するほど根本的な違いがあります。
この記事では、NTTが提供するワイヤレス固定電話について解説します。
私は現在、通信系企業でIoTや映像コンテンツのコンサルをしており、このワイヤレス固定電話についても深く関わっております。
この記事を読むとワイヤレス固定電話について理解する事ができます。
NTTドコモがhomeでんわを報道発表
2022年2月4日NTTドコモが、モバイルネットワークを利用した固定電話サービスである『homeでんわ』を発表しました。
提供開始予定は2022年3月下旬を予定しており、詳しい提供開始日は別途ドコモのホームページに公表されます。
NTTグループとしてついに本格的にコンシューマー向けのワイヤレス固定電話サービスを提供する事になります。
このワイヤレス固定サービス、実はソフトバンクとKDDIはすでに同様のサービスを提供していました。
ソフトバンク:おうちのでんわ
KDDI:ホームプラス電話
一般認知としてはそれほど進んでいなかった上記サービスに加えて、ついにNTTが参入した形になり、いよいよ本格的に固定電話の常識が大きく変わります。
そしてこのドコモの台頭によりNTT東日本とNTT西日本は、光コラボの高速固定通信だけでなく、固定電話の分野でも、存在感が薄れることになりそうなのです。
homeでんわとは
まずはそもそも『homeでんわ』とは何なのかについて解説します。
基本的なネットワーク構成としては人気のホームルーターサービス『home 5G』と同様です。
『home 5G』とは携帯の電波さえあれば、かなりの高い速度でインターネットが利用可能になるドコモのデータ通信サービスです。
家に光ファイバーを敷設する工事が必要なく、電源とドコモのサービスエリア内であれば、だれでも利用する事ができます。
回線速度にこだわらない人には、おすすめのサービスです。
ではホーム電話のネットワーク構成が、どのような構成になっているのかを具体的に解説していきます。
一般的に固定電話の構成
一般的な固定電話は、メタル線や光ファイバーなどの物理的な『線』が必要になります。
この電話線を自宅に引き込んで利用する為に、日本で人が住んでいる所には、電柱がたくさん建てられています。
光回線:光電話やIP電話
メタル線:昔ながらの加入電話
固定電話といえばだいたい上のイメージが持たれますが、ドコモのホーム電話は、このどちらにも当てはまりません。
ホーム電話の構成
ドコモのホーム電話も途中まで光回線は利用します。
電話ネットワークから光回線を使って、伸びる先にあるのは携帯電話の基地局です。
そこから携帯電話用の無線を使用して、自宅に設置した機械と通信します。
自宅まで光回線を引き込む必要がありませんし、自宅内での開通工事も必要ないのです。
この機械を設置してコンセントに挿して終了です。
またつなぐ固定電話機は、現在利用しているモジュラージャックコンセントに差している電話線を抜いて、この機会に差し込みなおすだけ利用できます。
ご自身の電話機のケーブルが使えるかどうかは、ケーブルの先端を見ると分かります。
上記のように爪のついたコネクタが付いていれば問題なく使えますが、違うタイプの電話機を使っている場合は、さすがに買い替えたほうがいいでしょう。
子機が不要な場合は、1万円以下で購入する事も可能です。
このように物理的な線を自宅に引き込まず、宅内部分は無線を利用する為、従来の固定電話とは区別してワイヤレス固定電話という風に表現します。
インターネット回線の契約は必要ありません。
今までの電話番号は使えるのか
ワイヤレス固定電話を検討するにあたって、一番気になるのが電話番号だと思います。
090~とかの携帯のような電話番号に変わったら困るわ
結論から言うとワイヤレス固定電話でも0AB~j番号を利用する事が可能です。
0AB~j番号とは、03とか06などから始まる固定電話用の番号帯です。
つまりNTT東日本やNTT西日本が提供している加入電話の電話番号も利用する事が可能なのです。
昔ながらの固定電話を利用していた方も番号が変わる必要がないので安心してください。
ただし他事業者の電話番号を使っていると移行できないパターンもありますので注意が必要です。
NTT以外の固定電話を使ってて移行できる場合
現在使っている番号を、過去にNTTから払い出された電話番号を他事業者(KDDIやソフトバンク)に移行して現在固定電話を使っている人はどうなるのでしょうか?
結論は、そのまま同じでドコモの『homeでんわ』に移行する事が可能です。
最初にNTTと契約してから、事業者を変えた人は大丈夫って事ね
もちろん新規契約をして新しくドコモから0AB~J 番号を払い出してもらって利用することもできます。
NTT以外の固定電話を使ってて移行できない場合
NTT東日本やNTT西日本以外の事業者から払い出された電話番号は持ち運びができません。
つまり最初からソフトバンク等で新規に固定電話を契約した場合などですね。
またNTT東西から払い出された電話番号であっても光電話専用の電話番は利用することができません。
ここはちょっとややこしい部分なんですが、あくまでも番号を持ち運びできるのは、最初にNTT東日本やNTT西日本から払い出された加入電話用の電話番号のみになります。
home 5Gと組み合わせる事で完全ワイヤレス環境に
さきほど紹介しましたドコモの『home 5G』ですが、この仕組みはhomeでんわも同じです。
無線を利用することによって自宅に光回線を引き込むことなく高速なインターネット環境を提供します。
これをとhomeでんわ組み合わせる事で、ネットも電話も無線で工事不要で通信環境を構築する事が可能となります。
実はこのサービスは、ソフトバンクやKDDIがすでに行っていて、ドコモは後発になるのです。
しかしこのタイミングでワイヤレス固定電話を提供してくるという事は、NTT独自の事情があるわけです。
なぜNTTがワイヤレス固定電話を提供するにいたったかの背景は下の記事で解説していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
ワイヤレス固定電話というのはそれほど目立つ存在ではありませんでしたが、NTTドコモが本格参入となれば市場は大きく変わる可能性があります。
いよいよ個人宅に物理的な線を引き込む時代の終わりが近づいてきているのです。
homeでんわの料金
続いてhomeでんわの料金を見ていきましょう。
まずは月額料金で基本はホーム電話ライトのプランに加入する事になります。
単体での基本料金は月額1,078円となります。
これは従来の固定電話である加入電話の基本料金よりも安い事になります。
home 5G を利用せず単体の利用でもおトクになります。
さらにhomeでんわセット割を適用する事で、528円の割引が適用される場合があります。
割引が適用されるセット割対象は以下のとおりです。
簡単に言うと家族でドコモの最新のスマホプランを契約している人がいれば、何かしらの割引を受けられるようです。
このセット割を受ける事ができれば、『homeでんわ』の『月額利用料は550円』となり、ひかり電話の月額利用料と同額になります。
なおひかり電話と光回線電話は異なる仕組みです。
たまにNTTの人が光回線電話の勧奨に来たりしますが、ひかり電話とは異なりますので理解した上で移行しましょう。
詳しくは下の記事で解説しています。
通話料金について
固定電話への通話料金が『8.8円/3分』で、携帯電話向けが『17.6円/分』で一律となります。
こちらも従来は、距離に依存していた通話料金とは違いIP電話の安い一律通話料になっています。
さらにお得なポイントとして、通話料にもファミリー割引が適用されます。
いわゆる家族間での通話無料が使えます。
さらにビジネス通話割引も適用可能です。
法人名義でグループを組めばその中でも通話無料になります。
特に中小企業の利用にも向いているでしょう。
オプション料金について
オプションの中でもFAXは、無料で利用が可能です。
その他の『発信者番号表示』や『転送でんわ』を利用した方は、別途オプションを料金を支払う必要があるので注意しましょう。
特に電話をかけてきた相手の電話番号を、電話機のディスプレイに表示する『発信者番号表示』は必要な方が多いと思います。
スマホでは標準で付いているのに、固定電話だとなぜか昔から有料なのよね
全てのオプションを利用したいのであれば、『homeでんわ ベーシックプラン』がおすすめです。
個別にすべてのオプションに入ると、オプション料金だけで『1,760円/月』も必要になりますが、『homeでんわ ベーシックプラン』であれば、セット割適用後の料金が『1,650円/月』なのでベーシックプランの方がお得だと言えます。
ライトとベーシックはご自身の状況に応じて最適なプランを選択してください。
初期費用について
初期費用は2つの費用が発生します。
- 契約事務手数料:2,200円
- 番号継続登録料:2,200円
またスマホのように最低利用期間(●年縛り)もありません。
ではhomeでんわの端末(homeでんわ HP01)の購入代金なのですが、2022年3月下旬まで発表予定で、現在未定となっております。
おそらく購入代金を分割で支払いつつ、毎月割引を適用して実質無料にしていくのではないかと想定されます。
主なスペックは以下の通りです。
電話機を作る老舗メーカで有名なシャープ製ですので安心ですね。
homeでんわの注意点
大変魅力的なhomeでんわですがいくつか注意点が存在します。
それが下の3つの事項です。
- 指定エリアでのみ利用可能
- 緊急通報の発信番号が異なる
- 停電時は使えない
順番に解説していきます。
指定エリアでのみ利用可能
まずはサービス開始直後のはhomeでんわは、『ドコモが指定するエリアのみ』でしか利用できないというものです。
回線ネットワーク自体は、4Gのモバイルネットワークを利用するので、一見全国各地でどこでも利用できるような印象を受けます。
これは通話品質に関連するのですが、固定電話は緊急通報を担う以上、人の命が関わってきます。
そんな重要な通信に電波状況が不安定な所で利用する訳には行けない事から、かなり厳しい通信品質基準が定められているのです。
その為、今の所はドコモが指定するエリアに縛りがありますが、順次このエリアを広げていくようですので、利用可能なエリアかどうかは必ずホームページで確認するようにしてください。
緊急通報の発信番号が異なる
次に注意するポイントとして、緊急通報(110,119など)があります。
homeでんわと仕様して緊急通報をした場合、相手に見える発信番号が『070/080/090』などの携帯電話と同じ番号になります。
普段使う03とか06といった0AB~J 番号では通知されませんので、必ず契約時にはこの070などから始まる携帯電話番号を確認して、電話機の近くなど見えるところに番号を控えておくことをおすすめします。
停電時は使えない
万が一停電した場合、homeでんわの端末の電力供給が止まり電話も利用できなくなります。
従来の黒電話などのように停電時にも利用ができるということはありません。
もし万が一の停電にも備えたい人は、必ず予備電源であるUPSなどを購入して備えてください。
特に日本は災害大国と呼ばれているように、他の国に比べても停電のリスクが高いです。
UPSがあればhomeでんわだけでなく、スマホの充電や電気ケトルでお湯を沸かすなど、災害対策用品として使えますので、ぜひ購入を検討してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ドコモのhomeでんわについて解説いたしました。
これまではネットも電話も光回線を利用したものが主流でした。
しかしそんな価値観もいよいよモバイルに置き変わろうとしています。
無線基地局から先のネットワークを支えるインフラ事業者としてのNTT東西の存在価値は、これからも重要ですが、コンシューマ向けサービスの存在感はやや薄れることになりそうです。
NTTの澤田社長が、『グループ全体で見れば取られたものを取り返す』と発言しているように固定とモバイルの融合を果たした新ドコモグループが誕生しました。
そもそもNTT東西とNTTドコモはNTTグループ内でも情報共有・協業が禁じられています。
競争原理で東西とドコモが競合しながら、NTT東西が今後どう立ち回るのかというのも注目のひとつです。
ユーザ視点では、モバイル導入の手軽さというメリットを生かし、品質や導入時の負担、価格など総合的に判断してあなたに合ったサービスを選択するようにしてください。
それではまたお越しくださいませ~
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